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学会案内|会長挨拶

会長挨拶

與語靖洋

 国連によれば、世界人口は、現在の約73億人に対して、2050年までに97億人、2100年には112億人まで増大すると予測されています。そのことに伴う食糧需要が高まる中、穀物作付面積は1981年をピークに減少傾向にあり、一人あたりの耕地面積は半世紀でほぼ半減しました。その原因の一つとして土壌の劣化や水不足が挙げられています。また、科学的に認知された野生生物の数は、世界で約140万~180万種あるのに対して、その0.01~0.1%が毎年絶滅しているとも言われています。その原因には、第1(開発や乱獲)、第2(里地里山などの手入れ不足)、第3(外来種、化学物質等)、第4(地球環境の変化)の4つの危機が上げられています。それらの危機は互いに関連しながら、世界人口を支える食糧生産にも悪影響を及ぼしています。

 国内に目を移せば、生物多様性損失の原因として、都市開発や土地の改変等、第1の危機の影響は未だに大きいものの、農業人口の減少や高齢化に伴う里地里山を中心とした耕作放棄地の増大等の第2の危機や、意図的・非意図的に侵入する外来種による第3の危機も顕在化しています。また、地球温暖化や極端気象に象徴される第4の危機も無視できません。雑草は、その全ての危機において存在しています。

 半澤洵氏が「雑草学」を出版した半世紀後の1961年に「日本雑草防除研究会」が設立され、それを発展させる形で、日本雑草学会は1975年に産声を上げました。「雑草研究」は、研究会設立当初、すなわちヨーロッパやアメリカの雑草学会とほぼ同時期から発刊しており、既に55年の歴史を刻んでいます。その間、除草剤抵抗性雑草や外来雑草等の難防除雑草の台頭、作用機構が異なる除草剤の開発や普及、除草剤耐性遺伝子組換え作物の開発と栽培面積の増加等がありました。また、雑草(植物)の利用場面も拡がってきています。雑草科学は、それらの変化に呼応するように、研究会設立当初の趣意である農耕地における雑草防除から雑草の利用や環境に至るまで、様々な研究分野を融合する形で発展しています。さらに、研究手法も、分類学から除草剤化学まで様々な分野で飛躍的に向上しています。

 社会の変化が目まぐるしい昨今、多くの科学がさらなる社会貢献や国際化を求められており、雑草科学も例外ではありません。科学の役割は、そもそも、何が、何故、どのようにという疑問を解き明かすことにあり、そのために膨大な時間と労力を要することも珍しくなく、昨今の社会変化に同調することにはなじまないように思います。一方、自らが解き明かした疑問が、社会に役立つことは目指すべき目標の一つであることも間違いありません。そのためには、情報発信や交換、研究交流などを積極的に進めるとともに、研究者が抱き育てている科学の疑問を連綿と繋ぐことが肝要です。

 雑草という言葉は、人との関わりの中で生まれたものですが、日本雑草学会会員による半世紀に及ぶ様々な研究成果は、単に農耕地における雑草防除だけでなく、利用も含めてその関わりを好転させることに少なからず貢献してまいりましたし、今後も大いに期待されます。日本雑草学会は、これまで、学会誌の発刊や、大会・シンポジウムの開催、学術研究部会や地域研究会等など、様々な研究活動の場を整備するとともに、培ってまいりました。これらの場を礎に、今後も産学官の異なる機関や研究者との交流を深めるとともに、将来を担う若手や、科学の答えを具現化する現場の方々への情報発信がしやすい環境づくりに尽力してまいりますので、皆様方の雑草科学への積極的な取り組みと協力をお願いいたします。

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