イチビ

Abutilon theophrasti Medik.
アオイ科 MALVACEAE

中国名: 苘麻(qing ma)
英名: velvetleaf(アメリカ雑草学会)

イチビの写真

撮影:中山祐一郎

特徴

原産国はインドもしくは中国とされ、現在ではアジアからヨーロッパの温帯に広く生育する。日本では、全国の飼料畑や畑地に広範に発生している。本種は、一年生のC3植物で、葉は互生し、心形で、長い柄がある。葉身の両面には肌触りのいいビロード状の短い軟毛が密生する。草丈は1–4mに達する。黄色もしくは橙黄色の5枚の花弁をもつ両性花を咲かせる。本種には、作物型と雑草型と呼ばれる2型が存在する。作物型は繊維植物として利用されてきた日本在来の型で、雑草型は輸入穀物の夾雑物として入ってきたと考えられている。さく果の色は作物型が黄白色、雑草型が黒色である。

雑草としての重要性

日本では夏畑作の強害雑草で、飼料用トウモロコシやソルガムでは特に重要である。圃場内には主に家畜糞に混入した種子で持ち込まれ、しばしば高密度で発生する。競合による減収だけでなく、イチビは茎が木質化するため、生長すると硬くなり、収穫作業の妨げになる。さらに、特有のにおいがあるため、飼料用トウモロコシでは、サイレージに混入すると嗜好性が低下する。食用を含むトウモロコシ栽培やソルガムでは、播種後2〜4葉期までの土壌処理でトリアジン系除草剤のアトラジンが有効である。イチビの生育期には、飼料用トウモロコシ、ソルガムのほか比較的多くの作目で、光合成阻害剤であるベンタゾンの雑草茎葉散布または全面散布が有効である。また、飼料用トウモロコシではスルホニルウレア系除草剤のハロスルフロンメチルがイチビに卓効を示す。本剤は、イチビを含む一年生および多年生の広葉雑草を対象として、雑草2〜5葉期、飼料用トウモロコシ3〜5葉期に雑草茎葉散布または全面散布が可能である。そのほか、ダイズではチアジアゾール系除草剤のフルチアセットメチルがダイズの2葉期〜開花期に使用できる。

文化・利用

日本においても強靭な茎の皮から繊維を採るために古くから栽培されていた。

文献・リンク

雑草モノグラフ: 佐藤 節郎・黒川 俊二・稲垣 栄洋(2004)
『雑草研究』(和文誌)掲載論文:33件(2021年12月時点)
Weed Biology and Management (英文誌) 掲載論文:4件(2021年12月時点)

©︎2022 日本雑草学会
(掲載写真の著作権は各撮影者にあります)