クサネム

Aeschynomene indica L.
マメ科 FABACEAE

中国名: 合萌(he meng)
英名: Indian jointvetch(アメリカ雑草学会)

クサネムの写真

撮影:押川純二

特徴

日本全国に分布する湿生の一年草。湖沼のほとりや氾濫原で、ヨシ帯程度の水条件で攪乱のため植生が少ない場所を好む。高さ1m以内のものが多いが、水田内に生えるとさらに大きくなる。葉が羽状複葉で、多数の小さい小葉がならぶようすがネムノキの葉に似ていることからクサネムの名がついたが、クサネムの葉は一回羽状複葉、ネムノキの葉は二回羽状複葉で、厳密にいえば大きく違う。小葉は就眠運動をおこなう。茎の下部の表面に多数の粒状の突起ができ、その内部には根粒菌が共生しているため、根粒に対比させて茎粒とよばれている。夏から秋にかけてクリーム色のマメ科特有の蝶型花を小さい総状花序に咲かせる。果実は長さ4 cm前後の豆果であるが、成熟すると種子1個ずつを含む4~9個の単位に分離して散布されるので、特に節果という。種子を包むさやの断片はコルク質で、水に浮いて散布される。種子は黒褐色で長さ約3.5mm。形はレンゲソウの種子に似て一側に突起がある。種子には硬実による休眠性があり、変温条件で休眠覚醒が進むため、多くの雑草の種子休眠が打破される埋土条件で逆に休眠が維持されることが知られている。

雑草としての重要性

近年、水田で非常に問題視されるようになった雑草である。種子の重さや大きさ(特に幅と厚さ)が玄米に近いため、収穫時に巻き込むと通常のライスグレーダーでは完全に除去することが困難で、等級低下(落等)の原因になる。水田にクサネムが発生する地域で色彩選別機も利用できない場合は、収穫に先立ってクサネムを手作業で刈り取る作業が必要となり、水田農家にとって大きな負担となっている。種子は好気条件で発芽しやすく、田面が露出した場所でよく発生する。発芽後に湛水すると実生が水面に浮遊し、畦際や田面が露出した場所に定着し成長する。そのような場所では湛水散布する水稲除草剤が効き難いため旺盛に生育する。水はけの悪い湿潤な転換畑でもよく発生する。

文献・リンク

『雑草研究』(和文誌)掲載論文:26件(2021年12月時点)
Weed Biology and Management (英文誌) 掲載論文:2件(2021年12月時点)

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