撮影:大川茂範
夏生の抽水性一年生植物で、水田、水路、湿地などに多い。草高は40~90cm。主茎は短く、直立し、分げつ茎は長く伸びて匍匐し、節から発根するほか、節間からも多数の不定根が出る。成長にともない、線形の根出葉から狭披針形の浮水葉を経て心形ないし卵状心形の抽水葉というように形の異なる葉を順次展開する。抽水葉の葉身は長さ5~15 cm、幅1.5~14 cm。花茎は直立、抽水し、花序は円錐状で、10~55個の花をつける。花は直径3cm前後、青紫色で美しい。花被片は6枚。雄蕊6個のうち5個は小さくて葯は黄色、1個は大きくて葯は青紫色である。葯と柱頭の位置は花の正中線に対して左右非対称で、右手と左手のように左右対称形の2型の花が存在し、鏡像二型性とよばれている。2型の花は花序の中で混在している。果実は蒴果で三稜形。種子は円柱形で長さ1.2~2 mm、表面には9~11本の縦肋がある。文献記録および標本によれば、かつては愛媛、長崎、鹿児島、沖縄を除く北海道から宮崎までのほぼ全国に分布していた。2003年から2004年にかけて日本雑草学会がアンケート方式で実施した分布調査では、北海道、青森、秋田、岩手、宮城、新潟、栃木、茨城、千葉、静岡、京都、大阪および岡山から分布が報告されている。最近、湿地、沼などでも個体群が著しく減少し、野生植物としての存在が危惧されている。日本の植物版レッドデータブックでは「絶滅危惧II類(絶滅の危険が増大している種)」に扱われている。和名ミズアオイは水に生え、葉の形が葵(フタバアオイ)に似ていることからと言われている。
ミズアオイは近年の分子系統学的解析からコナギとともにPontederia属に合一すべきことが提案されており、本学会でも推奨される学名表記について検討中である。
分布域内においては稲作の強害草として扱われた。1980年代末からスルホニルウレア系除草剤(SU剤)の普及により、ミズアオイは容易に防除できるようになったが、1993年に日本で最初のSU剤抵抗性雑草として報告され、再び注目されてきた。このため国内では雑草としてのミズアオイに関する研究がその生理・生態や管理を中心に多数、実施されている。
日本において、ミズアオイは食材として利用され、和歌に詠まれるなど古くから人々に親しまれてきた植物である。
雑草モノグラフ: 古原 洋・万 小春・赤井 賢成・汪 光熙(2011)
『雑草研究』(和文誌)掲載論文:39件(2021年12月時点)
Weed Biology and Management (英文誌) 掲載論文:1件(2021年12月時点)
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