撮影:井原希
北海道~九州の畑地、田畑周辺、果樹園などの農耕地や空き地、線路沿いなどの非農耕地など様々な場所に発生する。夏生の多年生。地上茎は直立する栄養茎と胞子茎の2形があり、早春に発生する胞子茎(つくし)が胞子を散布し枯れたのち、栄養茎が発生し晩秋まで地上にみられる。繁殖や分布拡大としては胞子による有性生殖より地下部の根茎および塊茎による無性生殖の方が重要である。栄養茎は高さ20~40 cm、節には枝を輪生する。胞子茎は10~30 cm、葉緑素を持たないため淡紅色~褐色で肉質、茎の先端に胞子のう穂をつける。地下部では根茎が縦横無尽に伸長しており、地下1 m以上の深さまで分布することもある。
耕起や除草しない期間が長い作目の畑作や果樹園地、芝地などで問題となりやすい。一旦、侵入や定着を許した場合、地上部は非選択性の茎葉処理剤などで防除できるが、地下深い部分にも相当な根茎や塊茎が存在するため移行性の高い剤でも根絶は困難である。逆に非選択性除草剤の連用により他の雑草植生が消失した結果、再生したスギナの純群落に移行したと思われる農地法面、畦畔や非農耕地を度々見かける。また、塊茎および短い根断片ともに高い萌芽能力があるため、地上部生育期の耕起はかえってスギナを分布拡大させることも根絶を困難にしている。地上部のない冬季に後の胞子茎や栄養茎となる越冬芽が地表付近まで伸長するが、この越冬芽をターゲットにした耕起や土壌処理剤は翌春の地上部だけでなく地下部に対しても防除効果が大きいとされる。
胞子茎(つくし)が佃煮などで食されるほか、栄養茎も生薬として利用される。
『雑草研究』(和文誌)掲載論文:38件(2021年12月時点)
Weed Biology and Management (英文誌) 掲載論文:9件(2021年12月時点)
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