コナギ

Monochoria vaginalis (Burm. f.) Kunth
ミズアオイ科  PONTEDERIACEAE

中国名: 鸭舌草(ya she cao)
英名: monochoria(アメリカ雑草学会)

コナギの写真

撮影:森島靖雄

特徴

アジアの熱帯から温帯の湿地や水田に広く分布するミズアオイ科の一年生草本。熱帯ではときに多年生となる。水稲に随伴して渡来した史前帰化植物のひとつと考えられている。本州、四国、九州および沖縄の水田に広く分布し、北海道では道南でわずかにみられる。抽水性植物で、草丈は10~60 cmだが、熱帯の多年生のコナギは高さ120 cmに達する。種子から発芽すると、まず1枚の子葉が展開し、初期の5~6枚の本葉は沈水状態で線形葉となり(中国名の鴨舌草はこの形態に由来する)、その後、成長とともに狭披針形の浮水葉、披針形の抽水葉、卵形~心臓形の抽水葉を順に展開する。葉はいったん形成されると水深などが変わっても形を変えない。コナギは水稲の栽培スケジュールにあわせて生活史を完了させる。水田に湛水される春から初夏にかけてが発芽の適期で、夏期に旺盛に生育し、8月から開花を始めて9~11月まで開花と結実を続け、土壌表面に種子を落とした後、枯死する。落下した種子は、耕耘などの農作業によって土壌シードバンクを形成し、翌年以降の発生につながる。
コナギは最初Pontederia属のもとで記載され、のちに分けられてMonochoria属とされたが、近年の分子系統学的解析からミズアオイなどとともに再びPontederia属に合一すべきことが提案されており、本学会でも推奨される学名表記について検討中である。

雑草としての重要性

コナギは、日本の長い稲作の歴史のなかで常に強害草または害草として扱われてきた。近年の新しい除草剤の開発と普及により、防除が比較的容易になってきたにもかかわらず、除草剤の効果が不十分な一部の水田や休耕田などで繁茂している。機械除草(中耕)を行う水田でも多発する傾向がある。1998年には秋田県と茨城県で、日本の水田で広く使用されているスルホニルウレア系除草剤に対して抵抗性をもつコナギが初めて報告され、その後、19府県でこの抵抗性生物型が顕在化している。

文化・利用

コナギは日本では古くから親しまれてきた植物で、『日本書紀』や『万葉集』にも登場する。食用や摺染めの材料として利用され、古くは栽培もされていた。

文献・リンク

『雑草研究』(和文誌)掲載論文:124件(2021年12月時点)
Weed Biology and Management (英文誌) 掲載論文:8件(2021年12月時点)

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