2019年度の活動

2019年度 近畿雑草研究会

近畿雑草研究会を除草剤抵抗性雑草研究会と共催で開催しました。

【日時】2019年7月27日(土)受付13:00~、講演13:30~
【場所】京都大学 北部構内 農学生命科学研究棟1F セミナー室(1)
【参加費】第1部、第2部ともに無料

第1部 除草剤抵抗性雑草研究会

 穀物の輸入元である北米や南米では、少なくとも4種のグリホサート抵抗性ヒユ属雑草が報告されています。これらの種子が輸入穀物とともに国内にも侵入していますが、ヒユ属雑草の識別は容易ではなく、かつ、同種異名も存在し、一部で混乱が生じています。本研究会の前半では、ヒユ属雑草の識別と生態的特徴についてご講演いただきます。第2部では、ヒユ属も含めた種名不明の雑草の同定会を行います。畑などに侵入し、除草剤処理後も残存している未同定雑草などのサンプルもご持参ください。
 後半は、国内で最初に報告されたグリホサート抵抗性ネズミムギの防除について、共生する糸状菌エンドファイトとの関係からご講演いただきます。

【プログラム】
13:30~13:35
 「はじめに」
  冨永 達 氏(京都大農学研究科)
13:35~14:35
 「ヒユ科ヒユ属雑草数種の識別と生態的特徴」
  浅井 元朗 氏(農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター)
14:35~15:35
 「グラスエンドファイトとの共生からみたグリホサート抵抗性ネズミムギとその防除」
  山下 雅幸 氏(静岡大学学術院農学領域)

15:35~15:45 休憩

第2部 近畿雑草研究会勉強会

 近畿地方でも農業現場で外来雑草が猛威をふるっていますが、新顔の雑草を正確に同定することはなかなか難しいものです。「たぶん」でとどまっていることも多いのではないでしょうか。第2部では、雑草研究者・農業関係者が集まる機会を利用して、雑草の同定・識別の勉強会・意見交換会をおこないます。第1部の講師陣に加え、近畿地方で精力的に帰化植物の調査を進めておられる稗田真也氏に講師をお願いしていますが、全員参加の情報交換会にしたいと思います。
 参加される皆様は(できる限りでけっこうですが)地元で問題になっている雑草や名前のわからない雑草のサンプルをご持参ください。腊葉標本・生植物のどちらでもけっこうです。生植物は土を落とした状態で、ポリ袋に入れてお持ちください。花や実がないものでもけっこうです。すでに名前がわかっているものでも、他の地方から持ってこられたものと並べてみるとまた新たな発見があるかもしれません。
 最後に、稗田氏から、外来植物の名前をつきとめるまでの過程について、事例紹介をしていただきます。

【プログラム】
15:45~17:00
  同定・意見交換会
  講師:浅井 元朗 氏・稗田 真也 氏・ほか
17:00~17:30
 「外来植物における同定の面白さと重要性 -オオバナミズキンバイ(広義)を中心に-」(仮題)
  稗田 真也 氏(滋賀県立大)


2019年度 近畿雑草研究会の総会およびシンポジウム

近畿雑草研究会の総会およびシンポジウムを開催しました。

【日時】2019年12月14日(土)
【場所】京都大学 北部構内 農学生命科学研究棟(リンク先の地図の16番の建物)1F セミナー室(1)
【参加費】無料

【プログラム】
 13:30~14:00 受付
 14:00~14:30 総会
 14:30〜14:45 一般講演
 綱木海成、栗山美鈴、森本正則(近畿大・農)
 「雑草ホウズキ類に含まれる昆虫摂食阻害物質」

 15:00~17:30 シンポジウム「水田雑草コナギの生物学最前線」
 横田孝雄(帝京大学理工学部)
 「微生物による水田雑草コナギの発芽促進」
 水田にはコナギが繁茂することが知られている。本研究ではイネ組織に含まれるアミノ酸やリン酸などが土壌バクテリアの増殖を促進することを明らかにした。バクテリアはコナギの種皮を消化・破壊することによりその発芽を誘導すると考えられ、これがコナギの大量発生の誘因の一つであろうと結論できる。

 太田健介(住友化学)
 「スルホニルウレア系除草剤抵抗性コナギに関する研究:in vivo およびin vitro薬量応答試験から得られた知見」」
 水稲作における代表的な強害雑草であるコナギについて、日本各地でSU剤に対する抵抗性生物型の発生が確認されている。その抵抗性機構について、過去には、SU剤の作用点であるALSの遺伝子レベルでの研究が数多くなされてきた。一方で、in vivo 植物体レベルでの研究やin vitro 酵素レベルでの研究事例は少なく、ALS遺伝子における作用点変異のバラエティーと、植物体レベルおよび酵素レベルでの抵抗性プロファイルとの関係については不明な点が多かった。そこで、筆者らは、SU剤抵抗性コナギについて、様々な作用点変異を持つ材料を集め、植物体レベルおよび酵素レベルでの薬量応答試験を行った。本発表では、それらの薬量応答試験から得られた知見を紹介する。

 谷垣伸二(京都大学農学研究科)、内野彰、大川茂範、三浦恒子、濱村謙史朗、松尾光弘、好野奈美子、上野直也、外山祐介、福見尚哉、来島永治、増田太郎、下野嘉子、冨永達、岩上哲史
 「コナギにおけるALS多重遺伝子ファミリーに見出される変異と除草剤抵抗性の進化」
 ALS抵抗性雑草の多くはALSのアミノ酸置換により抵抗性を獲得している。コナギは機能型と推定されるALS遺伝子を4種持つと考えられている(ALS1、ALS2、ALS3、ALS5)。これらはすべて幼植物で転写が認められるにも関わらず、これまでに発見されたALS阻害剤抵抗性コナギでは、そのうち2つの遺伝子(ALS1およびALS3)でしか抵抗性変異が発見されていない。本研究では国内で発見された除草剤抵抗性コナギ約60集団について遺伝子間の抵抗性変異の頻度を比較するとともに、抵抗性進化への制約について、各遺伝子の機能や発現量の観点から解析したので、その結果を報告したい。