クログワイ

Eleocharis kuroguwai Ohwi
カヤツリグサ科 CYPERACEAE

中国名: 野荸荠・野荸薺(ye bi qi)
英名: spikerush(近縁数種の総称)

クログワイの写真

撮影:(非公開)

特徴

北海道を除く全国に分布する多年生の抽水植物。水田、ため池、流れのゆるい用水路などに生える。葉が退化し棒状の茎だけが叢生する姿は開花前のイヌホタルイにやや似ているが、茎の太さが先端近くまであまり変わらず、先端がとがらないため区別することができる。茎は中空で薄い隔壁が密にあり小さな部屋に分かれている。株元から水平に複数の細い地下茎を伸ばし、先端に子株をつくることを繰り返して指数的に増殖する。秋になるとそれぞれの株から斜め下方に地下茎を伸ばして先端に直径1cm前後の赤褐色~黒褐色の塊茎をつけ、これが越冬して翌年の発生源となる。秋に茎の頂端に茎とほぼ同じ太さの目立たない穂をつけるが、種子繁殖がどの程度起こっているかは不明。

雑草としての重要性

クログワイは水田の代表的な難防除雑草とみなされているが、まったく発生がみられない地域もあり、地下水位の高い水田に多い。競合によってイネの収量を低下させるだけでなく、密度が高くなると共倒れによるイネの倒伏被害を招く。耕盤付近の深層にできる塊茎から長期にわたってだらだらと発生するため、本種に有効な問題雑草一発処理剤の利用あるいは中・後期剤を含む体系処理を注意深く検討する必要がある。耕種的な防除手段としては、稲刈り後早期の攪拌耕で塊茎形成を妨げることや、冬期の反転深耕で越冬中の塊茎を露出・死滅させることが有効とされている。塊茎には休眠性があり数年間にわたって萌芽力を維持するため、根気強い対策が必要である。

文化・利用

ピリピリグサ、メジメジグサなど、茎をつぶしたときに出る音に由来する方言名がある。塊茎には甘味があり、かつては食用にされていた。中国や東南アジアにはクログワイに似て著しく大きな塊茎をつくる栽培植物があり、中国名を荸荠または馬蹄、和名をオオクログワイまたはシナクログワイというが、クログワイおよび近縁種イヌクログワイとの系統関係はよくわかっていない。

文献・リンク

『雑草研究』(和文誌)掲載論文:97件(2021年12月時点)
Weed Biology and Management (英文誌) 掲載論文:3件(2021年12月時点)

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