ツユクサ

Commelina communis L.
ツユクサ科 COMMELINACEAE

中国名: 鴨跖草(ya zhi cao)
英名: Asiatic dayflower(アメリカ雑草学会)

ツユクサの写真

撮影:下野嘉子

特徴

北海道から沖縄まで全国に分布する一年草。畑地や草地、道ばたや水田畦畔など、さまざまな場所で普通に見られる。種子で繁殖する。種子は春から初夏にかけて出芽し、茎は下部から分枝する。葉は卵状披針形。植物体表皮にクチクラ層を発達させるため、つるつるしてやや肉厚な質感がある。夏から秋にかけて葉腋に、茎に向く面を内側にして中央で上方に折れる総苞がつく。総苞の内部には数個の花がつき、1つずつ、時に2つが外に出て開花し、1日でしぼむ。花弁は3枚で、下方の1枚は披針形で白色、上方の2枚は卵形、青色で目立つ。花序には両性花と雄性花が混在しており、外見上大きな違いはないが、雄性花は花柄が長くめしべが発達しない。蒴果は総苞に包まれたまま発達し、灰褐色で表面に凸凹のある大きな4つの種子をつくる。種子の寿命は畑条件では極めて長いが、水田条件では比較的短命とされる。

雑草としての重要性

畑雑草の中では特に防除が困難な草種の1つとされている。草丈は被蔭下でもせいぜい50cmほどで、作物の草冠を高く突き抜けて生育することはまれだが、1個体の重量や空間を専有する体積は大きいので、高い密度で発生した場合の雑草害は大きい。土中深くから出芽でき、発生時期もばらつくので土壌処理除草剤の効果は十分でなく、また、茎葉処理除草剤も吸収されにくく、剤の種類に関わらず効きにくい傾向にある。このため、除草剤の使用が一般的でない時代には畑雑草群落の一要素に過ぎなかったが、除草剤の使用が普通になった現在では、ツユクサの残草が目立つ圃場が多く見られるようになった。転作田では畑ほどは多くないが、畑作期間が長くなるにつれて増加する傾向がある。機械的に除草したものを放置すると節から根を伸ばして活着し再び開花結実するので、植物体は畑の外に持ち出して処分することが望ましい。

文化・利用

古代から染料として使われ、万葉集にも「月草(つきくさ)」という名前でしばしば登場する。これらの歌には染め物として、また、移ろいやすいものの象徴として詠み込まれている。これは、ツユクサの色素が水溶性で落ちやすいことや、朝咲いた花が午後にはしぼんでしまうことによると考えられている。ツユクサの栽培変種であるオオボウシバナ(青花)は江戸時代から染め物の下絵を描く絵の具として利用され、現在でも滋賀県の一部で栽培が続けられている。

文献・リンク

『雑草研究』(和文誌)掲載論文:23件(2021年12月時点)
Weed Biology and Management (英文誌) 掲載論文:1件(2021年12月時点)

©︎2022 日本雑草学会
(掲載写真の著作権は各撮影者にあります)