シロザ

Chenopodium album L.
ヒユ科 AMARANTHACEAE

中国名: 藜(li)
英名: common lambsquarters(アメリカ雑草学会)

シロザの写真

撮影:森島靖雄

特徴

北海道から沖縄まで全国に分布する一年生の陸生植物。極めて普通な夏畑雑草で、特に北日本の畑圃場ではよく目立つ。空き地などにも見られる。種子で繁殖する。夏生雑草としては6℃程度の低い温度でも発芽可能で、早春から出芽が始まる。発芽適温は25℃程度。幼植物は小さく軟弱で、死亡率も高いが、生育を続ければ2mほどにもなる。茎は直立し、作物などによる被覆がない条件では分枝も多く出す。縦に緑色の筋が走り、株の直径は3cmほどにもなって硬い。葉は互生、茎の中部以下につく葉には葉柄がある。葉身は菱形状の卵形か、長い三角状卵形で先はとがり、基部はくさび形で、鋸歯がある。上部の葉は披針形で全縁。表面には白、または赤い粉がふいたようにみえる。生育初期に赤い粉が目立つ個体も、生育が進むと次第に白が目立つようになる。花序は円錐花序。花は軸に密集して付き、披針形、全縁の苞葉が混ざる。花被は1mmほどで倒卵形、両性花。開花は晩夏に一斉に始まる傾向がある。種子は平たい円形で黒く光沢があるが、全体または一部に白褐色の薄皮をかぶったまま散布される。散布直後の種子は強い休眠状態にあるが、翌春には大半の種子が休眠から覚醒し、夏の高温で二次休眠に入る。種子の寿命は畑雑草のなかでは長い方で、湛水条件でも死亡率は高まらず、大きな埋土種子集団を形成しやすい。

雑草としての重要性

代表的な畑雑草で、除草剤に対する感受性が比較的低いため、除草剤の利用が普及した現在でも重要度は高い。特に寒冷地では夏畑作物栽培で優占しやすく、作物の収量を大きく減少させる原因になる。温暖地では冬作物の収穫期に繁茂して、収穫の邪魔になることがある。大きく育ったシロザは枯れ上がりが遅く、ダイズ栽培圃場では収穫期まで生育を続けるため、汚損粒の原因としても重要である。乾田直播以外では水田で問題になることはなく、転作田でも発生は少ないが、畑状態が続き、圃場の排水性が次第に改善されると増加する傾向がある。

文化・利用

日本では、救荒植物とされている地域はあるものの、通常、好んで食べられることはない。バングラデシュやインドの一部、中国では食材や薬草として利用されるという。茎は固く、乾燥すれば軽くなるので杖に使える。現在でも、里山の登山道ではシロザの茎が杖として用意されているのを見かける。

文献・リンク

『雑草研究』(和文誌)掲載論文:62件(2021年12月時点)
Weed Biology and Management (英文誌) 掲載論文:14件(2021年12月時点)

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