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学会案内|会長挨拶

会長挨拶

会員の皆さまへ

2024年5月14日

2024年3月23日に開催された2024年度代議員総会および第22回理事会により理事会が新体制となり、一般社団法人日本雑草学会の代表理事・会長に就任いたしました。60数余年の歴史と伝統ある日本雑草学会の舵取り役を担うことに、誇りと重責を感じております。会員の皆さまには、野口彌吉初代会長から小林浩幸前会長までの歴代の25名の会長と比べれば、はなはだ心許なく頼りないことと思います。甚だ微力ではありますが、役員一丸となり、学会の運営に責務を全うする所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

昨年5月に、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが2類から5類へと変更されたことにより、日常生活における様々な活動制限の撤廃が行われました。こうした中、本年3月には宇都宮大学にて第63回大会を5年ぶりに懇親会も含めて通常開催することができました。また、大会中にJR宇都宮駅に隣接するライトキューブ宇都宮で特別シンポジウム「緑に沈む国、⽇本。誰が草刈りを担うのか-農村と都市からの報告と未来に向けた提⾔-」や企業展示も行われ、会員だけでなく、多くの一般市民も参加し、大変に盛況な大会となりました。宇都宮大学の皆さまを始め、大会および特別シンポジウム開催にご尽力いただいた関係者の皆さまには心より深く感謝申し上げます。

日本雑草学会は、1962年発足の「日本雑草防除研究会」を前身として、1975年に設立いたしました。2019年3月には、「任意団体」の日本雑草学会から一般社団法人日本雑草学会となり、新たな歴史を刻み始めました。法人格を得て、早6年目を迎えます。一般社団法人日本雑草学会は、定款に記されたとおり、「雑草の制御および利用、ならびにそれらと環境に関する研究の推進と研究成果の発信により、雑草科学の発展および雑草管理技術の普及への貢献を目的」とする団体です。この目的に沿い、今期も会員にとって有益な活動をさまざまに行っていくとともに、法人格をもつ学会として、本学会は将来に亘って社会的責任と社会貢献を果たしてまいります。

そのため、学会の事業の中でもっとも重要なもののひとつである学会誌(和文誌「雑草研究」と英文誌「Weed Biology and Management」)の発行については、理事である編集委員長を中心に編集委員会の各委員が努力を重ね、その内容の充実と認知度の向上を図ってまいります。会員の積極的な論文投稿をお願いするとともに、賛助会員の皆さまには所属する職員による積極的な論文投稿をお願いいたします。英文誌に関連しては、科学研究費助成事業の研究成果公開促進費(国際情報発信強化)が今年度も不採択となりました。複数年、応募を続けて参りましたが、現状、科学研究費の助成獲得は大変厳しいものと認識しております。今期は、新たな切り口での資金獲得を目指して、関係者と尽力していきたいと考えております。

本学会は、会員の中から、雑草科学の発展と雑草の制御および利用技術に関する研究推進の面で優れた業績をあげた者に対して業績賞、雑草の制御および利用技術とその普及ならびに除草剤などの開発の面で優れた業績をあげた者に対して技術賞、雑草科学の発展と雑草の制御および利用技術に関する研究・技術の面で優れた萌芽的成果をあげ、さらに将来の発展を期待し得る者に対して奨励賞を授与し表彰しております。この学会表彰制度は、雑草学の発展のため学術上および技術開発上において多大の貢献をされた会員を表彰することによって、会員の皆さまの研究活動の意欲を高揚し、本学会を活性化に資する目的で設けられているものですが、それにとどまらず、これらの業績は、人類の進歩・発展に大きく貢献する知的共有財産と認識しております。本学会として、積極的に社会に発信してまいります。

本年7月にギリシアにおいて第20回International Plant Protection Congressが開催されます。本学会からは下野嘉子理事を派遣いたします。また、来年、中国において第29回Asian-Pacific Weed Science Society Conferenceが開催されます。日本の雑草学のプレゼンスを国際的に高め、会員の皆さまの有意義な学術交流の場となるように国際会議等出席補助の助成を行いますので、若手研究者の積極的な参加を希望します。

前理事会(小林浩幸代表理事・会長)にて取り組み始めました用語委員会と企画委員会の充実を引き続き進めてまいります。用語委員会は、長年取り組んできた用語集の改訂作業に加えて、創立60周年事業で新たに生み出されたコンテンツや、本学会が長年蓄積してきた数多くの学術上または技術開発上の重要な情報を整理・深化させ、社会に情報発信する役割を担います。企画委員会は、引き続き、シンポジウムの企画、研究費の支援を目的とした若手研究者の研究課題補助を行うとともに、新たに生じた重要な課題に対し、迅速に対応してまいります。また、会員の世代間交流と知識や技術の伝承は大変重要な課題です。雑草研究についての先人方の理念や思いを受け継ぎ、次の世代に引き継いでいくことも大変重要な使命です。このような場を提供できればと思っております。

本学会の活性化は喫緊の重要な課題となります。皆さまご存じの通り、2001年度に1,251名を数えていた正会員は、減少の一途をたどり2020年度には533名となっています。また、会員の高齢化も進み、若手の正会員が減少しております。学会活性化のために、多くの若手研究者が会員となって活躍する学会を目指してまいります。そのためには、学生会員の新規入会促進だけでなく、学会発表が目的で入会した学生会員を大学院修了後も引き続き正会員として継続いただけるよう、会員全体の満足度の向上を図る必要があります。現状、正会員に移行していただける学生会員は、研究職を得た会員に限られております。これからは、研究職に就かない学生会員も、大学院修了後に正会員に移行して本学会の活動を支えていただけるよう小中高教員、博物館など教育・アウトリーチ業務を担う方々に入会いただけるような学会活動を展開してまいります。さらに、学会組織の活力を維持するためには、若手だけでなく、女性が活躍できる組織であることが重要です。女性会員の活躍と女性会員増加ために、本学会としてできる限り取り組んでまいりますが、皆さまの職場や教育現場での活動も極めて重要となります。会員の皆さまには是非ともご理解・ご協力いただきますようお願いいたします。一方で私も数年後にはシニア世代となりますが、ベテラン会員の皆さまには、終身会員制度もございますので、退職を機に退会されることなく、皆さまの知見を学会活動や若手会員のために役立てていただきたくお願い申し上げます。

会員数増加のための取り組みは進めてまいりますが、一方で会員が減少する中、本学会の事業が永続的に継続していくように事業のありかたを検討していく必要があります。そこで、今期はあらたに事業検討委員会を立ち上げます。委員長は小林浩幸前会長にお願いいたしました。今期中になにかを決め、実行していくことはまでは考えてはおりませんが、次期に取り組むべき指針を今期中には出せればとは思っております。

昨年4月に植物防疫法の一部を改正する法律(令和4年法律第36号)が施行され、あらたに有害植物として雑草を指定することが可能となりました。改正植物防疫法については、2022年度の本学会シンポジウムのテーマとして取り上げさせていただきました。しかしながら、法律が変わっただけで、すぐに状況が変わるわけではありません。植物検疫における雑草の防疫にかかる体制を構築していく必要があります。現在、農林水産省内で雑草検疫体制構築のための施策が進んでいることと存じますが、必要な情報を収集・蓄積し、社会や行政に届けることは法人格を持った本学会として重要な責務であります。また、技術開発だけでなく、検疫現場における雑草検疫の専門家を育成する必要もあります。本学会として、植物防疫法改正が実効性のあるものになるよう人材育成に取り組む必要もあります。

これら活動には多くの会員の協力のもと、役割分担による運営も必要となります。会員の皆さまにはより一層のご尽力を賜りたく、なにとぞよろしく願い申し上げます。皆さまと一体となって、若手もベテランも参加して楽しい学会へと成長させてまいります。

一般社団法人 日本雑草学会
代表理事・会長  小荒井 晃

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